なぜか日本では流行らないスヌート撮影。FBやインスタを見てると外国人で写真うまい人たちは普通にスヌートを持ってるように見うけられるし、知り合いの外国人マクロフォトグラファーでスヌート持ってない人っていないんですよね。これは日本と海外で写真というものに対する考え方が大きく違うのも一つの要因でしょう。 |
陸上写真の分野でもよく言われてることですが、 Photographを直訳すると「光画」「光絵」ということになりすなわち「光の芸術」と理解されます。一方日本ではphotographが「写真」と訳され、字面のイメージの影響から「真実を記録するもの」と理解してる人が多いです。もはや言霊の呪縛と言っていいです。 |
海外在住の日本人水中写真家の方と話したとき、僕は「光の中にどのように影を作るか」と表現したのに対しその方は「闇の中に光で何を浮き上がらせるか」と表現したのが印象的でした。当時の僕はまだまだphotographの世界にいなかったんだな~と。。。 |
①抜けのいい場所、つまり背景を水にできる場所にウミウシがいたとします。こんな場所にいるケースの方が少ないんですが、せっかくなので背景を水の色にする「青抜き」にしようとします。自然光を取り入れることになるので、iso感度を上げる、絞りを開く、シャッタースピードを遅くする、などの設定をすることになります。写真全体の色味としてはいいかもしれませんね。 |
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②例えば被写界深度を深く表現したい、被写体の色を鮮明にしたい(被写体部分から青の要素を排除したい)、手振れを回避したい、ノイズを減らしたい、と考えれば、iso感度を低くする、絞りを絞る、シャッタースピードを速くする、などの設定をして自然光を排除する「黒抜き」という方法もいいかもしれません。 |
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ただ、どんなにライティングに気を使っても、どんなにドアップで撮っても、全身を写そうとしたら地面を完全に排除することはできません。 |
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③実際には汚い海藻の生えたロープの上にいるんですが、被写体だけに光を当てることができれば、完全に地面を排除することができます。そのためにスヌートが必要になります。 |
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地面がちょっとぐらい写ってもいいじゃん!と考えるのか、地面がない方が美しい!と考えるのかは皆さんにお任せしますが、地面を写すことは誰でもできるけど地面を完全に消すことは「アイデア」と「道具」と「技術」を持ってる人にしかできません。当然後者が評価されますね。 |
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① | ② |
①ミジンベニハゼをどう撮るか?撮影者が考えるべきことですが「空き缶の中に住んでる「環境問題的写真」を撮ろうと思えば①は正解かもしれません。 |
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②実際には藤壺の中に住んでますが、「どこに住んでるかは重要ではない」「顔と瞳の輝きを表現したい」と思えば②の方が正解かもしれません。 |
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ここで一つ問題があるんですが、「生息環境までよくわかっていい写真ですね」と講評する写真家や学者やガイドが多いんです。言われた方は、「そうか!生息環境を写すことが大事なんだ!」と思ってしまいますよね。ここにも呪縛があります。写真は説明の手段という面もありますが、photographとしてはどうでしょう? |
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① | ② |
もっとわかりやすい例を見てみましょう。 |
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①どうしたって砂地にいるヒフキヨウジ。思い切り顔を持ち上げてる状態ならカメラを低く構えることによって砂面を写さないことができるかもしれませんが、まぁ厳しいですね。対処としては被写界深度を浅くして砂面をぼかすくらいでしょうか? |
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②スヌートによって顔だけに光を当てることができれば一風かわった他の人には撮れない写真になります。 |
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どちらが好きかはさておき。僕は②の方が撮ってて楽しいです。 |
①ヤシャハゼが高く飛んでくれれば、カメラを低く構えれば砂面を写さないことはできます。なのでこの写真はスヌートを使っていない、ただの黒抜きです。 |
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➁ネジリンボウをやや上から撮り下ろし。背景には砂があるはずですが光が当たってなければ写りません。黒い模様の生物の背景を黒くすることについてはどうかと思いますが(笑) |
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③岩面にいることが多いハナゴンベですが、偶然岩から離れた瞬間に黒抜きを狙うか、スヌートで背景の岩に光を当てないで黒抜きにするか、効率いいのは後者でしょうか。 |
いくつか作例を上げましたが、
スポットライト的効果を狙った写真が無いのにお気づきでしょうか?日本でも何年も前からスヌートが販売されてますが、スヌートをスポットライトとして捉えている人がほとんどで、その先に進んでる人を見たことがないです。スヌートを背景にして「お月様みたい」な表現はクリエイティブとしては有りだけど、本筋とは違うと思います。
写真はそこにあるもの全てが写ってしまいます。主題(撮りたいもの)を明確にするためにいらない要素を構図で削ったり、被写界深度でディテールを消したりするのが写真で「引き算の芸術」とも言われます。構図で排除しきれないものをライティングで排除するという「光の引き算」という考え方はどうでしょう?僕はそのようにスヌートを使っています。
次は各社から販売されているスヌートについて書きます。
具体的なテクニックについては書かないので学びたい方はこちら!